横浜地方裁判所 昭和56年(わ)390号 判決 1981年8月07日
裁判所書記官
小松正和
(被告人)
本籍
静岡県伊東市川奈九五四番地
住居
川崎市川崎区大師本町七丁目六番地 阿山方
会社役員
西原浩
昭和一六年四月二日生
(被告事件)
所得税法違反
主文
被告人を懲役八月及び罰金一、二〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金三〇、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
理由
(罰となるべき事実)
被告人は、建売住宅の建設及び販売等を営業目的とする西栄商事株式会社の代表取締役(昭和五一年八月二〇日から昭和五四年一〇月二五日まで)としてその業務全般を統括掌理するとともに、横浜市鶴見区東寺尾五丁目一四番三号に居住し、同区内においてヌード劇場「鶴見新世界劇場」及び貸金業「西原商事」を個人で経営していたものであるが、所得税を免れようと企て収入等の一部を除外し、仮名定期預金を蓄積するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和五二年分の実際の総所得金額が四二、三八〇、六五六円、分離課税による短期譲渡所得金額が七〇〇、〇〇〇円であったのに、昭和五三年三月一四日横浜市鶴見区鶴見一、〇七一番地所在の所轄鶴見税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が三、六二二、九二八円でこれに対する所得税額が一三〇、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により昭和五二年分の正規の所得税額一九、五四九、四〇〇円と右申告税額との差額一九、四一八、五〇〇円を免れ、
第二 昭和五三年分の実際の総所得金額が四一、五九三、五四五円であったのに、昭和五四年三月一三日前記鶴見税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が六、三六六、〇〇〇円でこれに対する所得税額はすでに源泉徴収された税額を控除すると二四、二九〇円の還付を受けることになる旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により昭和五三年分の正規の所得税額一八、二二五、七〇〇円と右申告税額との差額一八、二四九、九〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
1 被告人の当公判廷における供述
2 被告人の検察官に対する供述調書四通、並びに大蔵事務官に対する質問てん末書八通
3 被告人作成の昭和五五年一〇月七日付、同年一一月一三日付(八五枚つづりのもの)、同月一七日付、同年一二月二二日付各申述書
4 西原千世子の大蔵事務官に対する質問てん末書三通
5 阿山定男の検察官に対する供述調書二通、並びに大蔵事務官に対する質問てん末書二通
6 尾崎清次の検察官に対する供述調書、並びに大蔵事務官に対する質問てん末書四通
7 尾崎清次作成の申述書
8 高橋園子、安藤幸夫(二通)、柴田米夫(同年一二月二〇日付)、田山忠彦、山崎禮三、山本修司、野村安郎、石川定夫、石井英子、吉野啓子、松下浄、前田皓司、原英二の大蔵事務官に対する各質問てん末書
9 松本仁、安曽宏、黒川健、沢睦彦作成の各申述書
10 株式会社太陽神戸銀行鶴見支店支店次長三浦高二朗、日本信託銀行横浜支店支店長持丸末治、横浜信用金庫鶴見支店支店長大胡孝雄、横浜信用金庫潮田支店支店長草柳昭、株式会社協和銀行鶴見支店支店長森治、株式会社平和相互銀行川崎支店支店長野田沢利郎、三菱銀行鶴見支店支店長中村元直、川崎商工信用組合鶴見支店支店長下田精耕(二通)作成の各証明書
11 大蔵事務官作成の売上調査書
12 押収してある誓約書一通(昭和五六年押第二九一号の三)、及び営業権譲渡契約公正証書一通(同号の四)のほか
判示第一の事実について
13 被告人の昭和五五年一一月一三日付申述書(二枚つづりのもの)
14 大蔵事務官作成の脱税額計算書(二枚つづりのもの)、及び所得税額計算書(昭和五二年分)
15 押収してある昭和五二年分の所得税確定申告書一通(同号の一)
判示第二の事実について
16 大蔵事務官作成の脱税額計算書(一枚のもの)、及び所得税額計算書(昭和五三年分)
17 押収してある昭和五三年分の所得税確定申告書一通(同号の二)
(法令の適用)
1 罰条
判示第一及び第二の所為
いずれも所得税法二三八条、一二〇条一項三号(それぞれ懲役刑と罰金刑を併科する)
2 併合罪の処理
懲役刑について、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に加重)、罰金刑について、同法四八条二項
3 労役場留置
同法一八条
(検察官 川野辺充子出席)
(裁判官 上田耕生)